WordPressでPDFでアップロードしたけどサムネイルが表示されない時の対処法:ImageMagickとGhostscriptで実現

WordPressでPDFのサムネイルが表示されない時の対処法:ImageMagickとGhostscriptで実現

WordPressにPDFファイルをアップロードしても、サーバー環境によってはサムネイル(プレビュー画像)は自動で生成されません。これにより、メディアライブラリやサイト上での視認性が悪くなってしまいます。

この問題を解決し、PDFをアップロードするだけで自動的にJPG画像としてサムネイルを生成するためには、サーバー環境(この記事ではMAMP環境)に特定のツールを導入し、WordPressで使えるように設定する必要があります。

本記事では、Web制作初心者の方にも分かりやすく、ImageMagickGhostscriptという2つの強力なツールを使ってPDFサムネイルの自動生成を実現する手順を解説します。


なぜImageMagickとGhostscriptが必要なのか?

PDFを画像に変換するという作業には、役割の異なる2つのツールが不可欠です。

ツール名 役割 必須性 概要
ImageMagick 画像処理・変換 必須 リサイズ、切り抜き、フォーマット変換など、画像操作の「万能ナイフ」のようなツールです。JPGなどの画像ファイルを生成する役割を担います。
Ghostscript PDFの解釈・レンダリング 必須 PDFやPostScriptファイルを解釈するためのツールです。ImageMagickが単体で読み取れないPDFの内容を「翻訳」し、画像処理できる形式に変換する役割を担います。

【重要】 ImageMagickは画像処理は得意ですが、PDFの中身を画像として読み取る機能はGhostscriptに依存しています。したがって、PDFのサムネイル生成には、この2つのツールが連携することが必須となります。


サーバーのデフォルト設定とローカル環境の違い

「PDFファイルをアップロードした際に、自動でサムネイルが生成されるサーバーが多い」という話を聞くことがありますが、これは「サーバー側の環境が整っているか」によって決まります。

環境 PDFサムネイル生成 設定が必要な理由
一般的なレンタルサーバー ⭕ 生成されることが多い ユーザーの利便性のため、ImageMagickとGhostscriptがあらかじめインストール済みであることが多いため、手動設定は不要です。
ローカル環境(MAMP/XAMPP) ❌ 生成されない ローカル開発環境は初期状態では必要なライブラリが組み込まれていないため、手動でImageMagickとGhostscriptを導入し、PHPから使えるように設定する必要があります。

この記事は、主にMAMPなどのローカル開発環境でサムネイルが生成されない問題を解決するための手順を解説しています。


MAMP環境でのインストールと設定手順(macOS)

ここでは、macOSのMAMP環境を前提に、パッケージ管理ツールであるHomebrewを使用してツールをインストールする最も簡単な手順を解説します。

補足: Homebrewが未インストールの方は、先に公式サイトからインストールを済ませてください。

ステップ1: HomebrewでImageMagickとGhostscriptをインストール

ターミナルを開き、以下のコマンドを順に実行します。

  1. Homebrewを最新の状態に更新します。
    brew update
  2. ImageMagickとGhostscriptをインストールします。(ImageMagickの依存関係としてGhostscriptも同時にインストールされることが多いですが、確実を期すために明示します。)
    brew install imagemagick
    brew install ghostscript
  3. ImageMagickのバージョンを確認します。
    magick --version

ステップ2: imagick (PHPエクステンション) のインストール

ImageMagickをPHP(MAMP)から利用できるようにするための「橋渡し役」となるPHP拡張機能(imagick)をインストールします。

  1. peclコマンドでimagickをインストールします。
    sudo pecl install imagick
  2. インストール後、PHPモジュールとして正しく認識されているか確認します。
    sudo php -m | grep imagick

    imagick」と表示されれば成功です。

ステップ3: MAMPのphp.iniでimagickを有効化

MAMPがimagickを認識し利用できるように、設定ファイルであるphp.iniを編集します。

  1. MAMPで使用しているPHPのバージョンに対応するphp.iniファイルを探して開きます。
    • パスの例: /Applications/MAMP/bin/php/phpX.X.X/conf/php.iniphpX.X.Xは環境に合わせて読み替えてください)
  2. ファイル内のextension=imagick.soという行を探し、行頭のセミコロン(;)を削除して有効化します。

    ▼修正前

    ;extension=imagick.so

    ▼修正後

    extension=imagick.so
  3. ファイルを上書き保存します。

ステップ4: MAMPサーバーの再起動

php.iniの変更を反映させるため、MAMPのコントロールパネルからサーバー(Apache/NginxとMySQL)を一度停止し、必ず再起動してください。

ステップ5: PHPでimagickが有効か最終確認

実際にWordPress上でimagickが有効になっているかを確認します。

  1. WordPressサイトのテーマファイル(例: header.phpなど、一時的に使えるファイル)の先頭に、以下の1行を追記します。
    <?php phpinfo(); ?>
  2. ブラウザでローカルサイトにアクセスし、表示されたPHPの詳細情報ページ内で「imagick」と検索します。
  3. imagick module」の項目が「enabled」になっていれば、すべての設定は完了です!

    ※確認後はセキュリティのため、テーマファイルに追記したphpinfo();の行は必ず削除してください。


もしPDFサムネイルが生成されない場合の対処法

上記の手順を実行してもPDFサムネイルが生成されない場合、MAMPの環境変数設定が影響している可能性があります。

以下のファイルを開き、記述内容を確認してみてください。

/Applications/MAMP/Library/bin/envvars

もしこのファイル内に以下の2行があれば、**行頭に#を付けてコメントアウト**し、MAMPを再起動してください。

▼修正前

DYLD_LIBRARY_PATH="/Applications/MAMP/Library/lib:$DYLD_LIBRARY_PATH"
export DYLD_LIBRARY_PATH

▼修正後

#DYLD_LIBRARY_PATH="/Applications/MAMP/Library/lib:$DYLD_LIBRARY_PATH"
#export DYLD_LIBRARY_PATH

結び

お疲れ様でした!この設定により、MAMP上のWordPressでPDFファイルをアップロードした際に、自動で高品質なサムネイル画像が生成されるようになり、メディアの管理やサイトの表示が格段に改善されます。

よくある質問

Q: なぜImageMagickだけでなくGhostscriptも必要なのですか?
A: ImageMagickは画像処理が専門ですが、PDFの中身を画像として読み取るには、PDFの「翻訳者」であるGhostscriptが必須です。この2つのツールが連携することでサムネイル生成が可能になります。
Q: レンタルサーバーではなぜ設定不要なことが多いのですか?
A: 多くのレンタルサーバーでは、利用者の利便性向上のため、あらかじめImageMagickとGhostscriptが必要な設定とともにサーバー環境に組み込まれているため、ユーザー側で追加設定をする必要がありません。
Q: php.iniを修正したのに、サムネイルが生成されません。
A: php.iniextension=imagick.soのコメントアウト(;の削除)と保存、およびMAMPサーバーの「再起動」を必ず確認してください。それでも解決しない場合は、envvarsファイルの修正をお試しください。

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