はじめに
WordPressのサイト移行作業中、「データベースが反映できない」「なぜかサイトが表示されない」といった問題に直面していませんか？ローカル環境では動いていたのに、本番環境だとうまくいかない…というのは、Web制作者なら一度は経験する「あるある」かもしれません。
この記事では、そんなWordPress移行時によくあるトラブルと、その解決策をチェックリスト形式でご紹介します。焦らず、一つずつ確認していきましょう。
ケース1：データベース（DB）がインポートできない
データベースのインポート時にエラーが出る場合、移行元と移行先のデータベースのバージョンが異なっている可能性があります。
エクスポートした「.sql」ファイルを開き、以下の2点を確認・修正してみてください。
- 「utf8mb4_unicode_520_ci」を「utf8_general_ci」に変更
- 「utf8mb4」を「utf8」に変更
（参考：MySQLエラー「Unknown collation: ‘utf8mb4_unicode_520_ci’」の対処法）
ケース2：Search-Replace-DBが正しく動作しない
データベース内のURLを一括置換できる便利ツール「Search-Replace-DB」がうまく表示・動作しない場合、以下の点を確認してください。
- 設置階層の確認：ツール（Search-Replace-DB-masterフォルダなど）が、WordPressの「wp-config.php」ファイルと同じ階層にアップロードされていますか？
- バージョンの確認：サーバー環境（特にPHPのバージョン）とツールのバージョンが合っていない可能性があります。古いバージョンを試すか、公式リポジトリから最新版をダウンロードし直してみてください。
- パーミッションの確認：アップロードしたフォルダやファイルのパーミッション（権限）が原因かもしれません。テスト環境であれば、一時的にフォルダのパーミッションを「777」などに変更し、「内包している項目に適用（サブディレクトリにも適用）」してみてください。
※注意：パーミッション「777」は誰でも書き換え可能な状態であり、セキュリティ上非常に危険です。テスト環境での一時的な対処とし、作業完了後は必ず「755」や「644」など適切な設定に戻してください。
ケース3：サイトが真っ白で表示される（真っ白な画面）
移行後にサイトが真っ白になる（White Screen of Death）場合、さまざまな原因が考えられます。まずはエラー表示を確認するのが基本ですが、以下の点を順にチェックしてみてください。
- パーマリンク設定の更新：管理画面にログインできる場合は、「設定」＞「パーマリンク設定」を開き、何も変更せずに「変更を保存」ボタンを押してみてください。これにより「.htaccess」ファイルが再生成され、表示が直ることがあります。
- テーマの確認：「外観」＞「テーマ」で、意図したテーマが正しく有効化されているか確認してください。
- ホームページ表示設定の確認：固定ページをトップページに設定していた場合、「設定」＞「表示設定」で「ホームページの表示」が正しく引き継がれているか確認しましょう。
- プラグインの競合：プラグインが移行先の環境と合わずにエラーを起こしている可能性があります。一旦すべてのプラグインを「無効化」してみてください。もし管理画面にも入れない場合は、FTPソフトなどでサーバーに接続し、「/wp-content/plugins」フォルダの名前を一時的に変更（例：「plugins_old」）すると、強制的に全プラグインを無効化できます。
ケース4：メディア（画像）がアップロードできない
移行後、管理画面から新しい画像をアップロードできなくなった場合は、以下を確認します。
- アップロード容量の上限：大きな画像をアップロードしようとしていませんか？サーバーには一度にアップロードできるファイルサイズの上限が設定されています。容量を増やしたい場合は、サーバーの設定（php.iniなど）を確認してください。（参考：WordPressのアップロードファイルサイズ上限を増やす方法）
- パーミッションの確認：画像を保存するフォルダ「/wp-content/uploads」のパーミッションが書き込み可（通常は「755」や「777」など。サーバー環境によります）になっているか確認してください。
- パーマリンク設定の確認：ケース3と同様に、パーマリンク設定を一度更新してみてください。
ケース5：ローカル環境では動いたのに、サーバーでエラーが出る
ローカル（自分のPC）では問題なかったのに、本番サーバーにアップロードしたらエラーが出る場合、PHPの記述、特にヒアドキュメント（Here Document）構文が原因かもしれません。
ヒアドキュメントは、複数行の文字列を扱うための記述法ですが、構文のルールが厳格です。開始識別子（例：<<<EOT）や終了識別子（例：EOT;）の直後に、**目に見えないスペースやタブが入っている**だけでエラーになります。
// エラーになる例 (EOTの後にスペースがある) $data =<<<EOT foo bar EOT; // エラーになる例 (EOT;の行がインデントされている) $data =<<<EOT foo bar EOT;
エラーログを確認し、該当箇所がないかチェックしてみてください。（参考ページ：ヒアドキュメント(EOT)の落とし穴）
まとめ
WordPressの移行は予期せぬエラーが発生しがちですが、多くの場合、データベース、パーミッション、プラグインのいずれかに原因があります。この記事のチェックリストを参考に、一つずつ原因を切り分けて対処すれば、きっと解決できます。スムーズなサイト移行の一助となれば幸いです。
よくある質問（FAQ）
Q1. 記事で紹介されている「Search-Replace-DB」とは何ですか？
A1. 「Search-Replace-DB」は、WordPressのデータベース内に含まれる古いURL（例：ローカル環境のURL）を、新しいURL（例：本番環境のURL）に一括で書き換えるためのサードパーティ製ツールです。WordPressの移行では、記事本文や設定値に残った古いURLを修正する必要があり、このツールがよく使われます。
Q2. パーミッションを「777」にするのはなぜですか？ 危険ではないですか？
A2. パーミッション「777」は、「誰でも読み書き・実行できる」という最大限の権限を与える設定です。記事中でこの設定に言及しているのは、移行作業中に「権限がない」ことによるエラー（ファイルがアップロードできない、ツールが動作しないなど）が発生することが多いため、原因切り分けの一時的な手段として紹介しています。
ご指摘の通り、この設定はセキュリティ上非常に危険なため、本番環境での使用は絶対に避け、テスト環境であっても作業完了後は必ず「755」や「644」といった適切な権限に戻してください。
Q3. この記事の対処法をすべて試しても直りません。
A3. ご不便をおかけします。この記事で解決しない場合、サーバー固有の設定（PHPのバージョン、メモリ割り当て、セキュリティ機能（WAFなど））や、使用しているテーマ・プラグインの特殊な仕様が原因である可能性も考えられます。
まずは、サーバーの提供元（ホスティング会社）にエラーログの確認を依頼するか、WordPressのデバッグモード（wp-config.phpでWP_DEBUGをtrueにする）を有効にして、より詳細なエラーメッセージを確認することをおすすめします。