テキストエディタとIDEの違いとは?
Web制作を始めるにあたり、まず「テキストエディタ」と「IDE」の違いを理解しておくことが大切です。どちらもコードを書くためのツールですが、その目的と機能が異なります。
テキストエディタ
主な例: Visual Studio Code (VSCode), Sublime Text, Atom など
対象: HTML, CSS, JavaScript, PHP など
テキストエディタは、その名の通りテキスト(コード)を編集することに特化したアプリケーションです。基本的にはシンプルで、動作が非常に軽いのが特徴です。
Web開発では、書いたコードをブラウザで表示・確認(実行環境は別)するため、デバッグ(バグを見つけて修正すること)機能などは標準では強くありません。しかし、プラグイン(拡張機能)を追加することで、自分好みに機能をカスタマイズできるのが大きなメリットです。
IDE (統合開発環境)
主な例: Visual Studio, Eclipse, Xcode, PhpStorm など
対象: Java, Swift, C++ など
IDE(Integrated Development Environment)は、開発に必要な機能をすべて詰め込んだ「統合開発環境」です。テキストエディタの機能に加え、コンパイラ(コードを機械がわかる言葉に翻訳する機能)や強力なデバッガ、データベース連携など、あらゆる機能が最初から内包されています。
そのため、大規模なアプリケーション開発やiOSアプリ開発などでは必須のツールです。一方で、多機能な分、動作が重くなる傾向があり、主にフロントエンドが中心のWeb制作には機能過多となる場合があります。
Web開発、特にフロントエンド開発においては、動作が軽快でカスタマイズ性の高い「テキストエディタ」を使用するのが一般的です。
Web制作者におすすめの主要テキストエディタ5選
現在、Web制作者に人気のある主要なテキストエディタを紹介します。
VSCode (Visual Studio Code)

Microsoftが開発した、現在世界中で最も人気のあるテキストエディタの一つです。デバッグ機能やGit連携機能が標準で内蔵されており、豊富な拡張機能で強力にカスタマイズできます。動作も比較的軽く、UI(ユーザーインターフェース)も使いやすいため、迷ったらまずVSCodeを選べば間違いないでしょう。
Sublime Text

「恋に落ちるテキストエディタ」というキャッチコピーで知られるエディタです。非常に動作が軽快で、高機能な点が特徴。同じ文字列を同時に編集できる「マルチカーソル」機能や、プラグインによるHTMLのコード補完などが強力です。Windows、Mac、Linuxと環境を選ばずに利用できます。
Atom

VSCodeやSublime Textと同様に人気の高い、比較的新しいテキストエディタです。起動が速く、拡張機能も非常に豊富。UIのデザイン性も高く、直感的に使いやすいのが特徴です。HTMLのリアルタイムプレビュー機能なども便利で、初心者にもおすすめです。
(※Atomは2022年12月に開発が終了しましたが、依然として根強い人気があります)
サクラエディタ

古くから多くの開発者に愛用されている、日本製のオープンソース・テキストエディタです。Windows環境での使用に最適化されています。grep機能(複数ファイルからの文字列検索)やファイル比較、キー割り当てのカスタマイズなど、豊富な機能を備えており、多くのエンジニアに支持されています。
Vim

サーバー環境(黒い画面、CUI)でよく使われる、非常に歴史のあるエディタです。マウスを使わずキーボード操作のみで高速な編集が可能ですが、操作方法が独特なため習熟が必要です。「Vimmer」と呼ばれる熱狂的な愛用者も多く存在します。
テキストエディタ選びの3つのポイント
「きのこたけのこ戦争」のように、エディタ選びは好みによるところも大きいですが、Web制作者が快適に作業するためには、以下の3つのポイントを重視するのがおすすめです。
- 動作が軽快であること
IDEではなくテキストエディタを選ぶ最大の理由の一つが「軽さ」です。起動が速く、入力やファイルを開く際にストレスがないことは非常に重要です。 - 安定していること(落ちない・固まらない)
集中してコードを書いている最中にエディタがフリーズしてしまっては、作業効率が著しく低下します。安定性はツールとしての大前提です。 - 拡張性が高いこと(プラグインが豊富)
作業効率を上げるためにはカスタマイズが欠かせません。コードの補完機能、文法チェック、Git連携など、必要な機能を後から追加できる「プラグインの豊富さ」はエディタ選びの鍵となります。
結論:Web制作には「VSCode」がおすすめ
上記3つのポイント(軽さ・安定性・拡張性)を高いレベルで満たしているのが、「VSCode」です。
- 動作が比較的軽快
- Microsoftによる開発で安定性が高い
- プラグインが圧倒的に豊富で、最新の技術にもすぐ対応する
- Git連携やデバッグ機能が標準搭載されている
- 情報が多く、困ったときに解決しやすい
これらの理由から、特にこだわりがなければ、まずVSCodeから使い始めてみることを強くおすすめします。
また、AtomはVSCodeよりさらにシンプルで軽い場合があるため、「ちょっとしたメモや設定ファイルを開く用」としてサブで使うのも便利です。自分に合った使い方を見つけてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. Web制作初心者ですが、最初はどのエディタを使えばよいですか?
A1. 結論から言うと、「VSCode (Visual Studio Code)」をおすすめします。 世界中で最も多くのWeb制作者に使われており、無料で利用できます。情報が非常に多いため、使い方で困ったときもインターネットで検索すればすぐに解決策が見つかります。また、拡張機能が豊富なので、HTML/CSSのコーディングからJavaScriptの開発まで幅広く対応できます。
Q2. IDEはWeb制作(フロントエンド開発)には向いていないのですか?
A2. 向いていないわけではありませんが、機能過多になるケースが多いです。IDEは大規模なシステム開発やアプリ開発向けに設計されており、多くの機能が最初から搭載されているため動作が重くなりがちです。シンプルなWebサイト制作やフロントエンド開発では、軽快に動作し、必要な機能だけをプラグインで追加できるテキストエディタの方が効率的な場合が多いです。
Q3. 無料のテキストエディタと有料のエディタ(PhpStormなど)の違いは何ですか?
A3. 主な違いは、特定の分野への特化度とサポート体制です。例えば、有料の「PhpStorm」はPHP開発に特化したIDEであり、PHPのコード解析やデバッグ機能が非常に強力です。VSCodeなどの無料エディタは汎用性が高いですが、特定の言語で高度な開発を行う場合は、有料の専用IDEの方が機能が充実していることがあります。ただし、現在のWeb制作(フロントエンド)においては、VSCodeなどの無料エディタで十分すぎるほど高機能です。