データベースの主な種類:RDBMSとNoSQL
こんにちは。「インターライフメディア ブログ」です。Webサイトやアプリケーションを支える技術の一つに「データベース」があります。これは、大量の情報を整理し、効率的に管理・利用するためのシステムです。
データベースは、その構造や特性によっていくつかの種類に分類されますが、今回は特に重要な「RDBMS」と「NoSQL」という2つの大きなカテゴリーについて解説します。
RDBMS (リレーショナルデータベースマネジメントシステム)
WordPressなどで標準的に使用されているMySQLは、このRDBMSに分類されます。一般的なWeb開発で最も広く使われているのが、このRDBMSです。
特徴
RDBMSとは、リレーショナルデータベース(関連性を持たせたデータの集まり)を作成・利用するためのソフトウェアです。以下のような特徴があります。
- データの整合性(正確さ・矛盾のなさ)を維持しやすい。
- 「SQL」という専門言語を使用して、簡単にデータを参照・更新できる。
- 信頼性の高い更新処理を実現する「トランザクション機能」がある。
- 障害発生時でも、格納したデータが失われにくい堅牢性を持つ。
- セキュリティやチューニングなど、豊富な周辺機能が揃っている。
テーブル構造によるデータ管理
RDBMSでは、データを格納する前に「テーブル(表)」と呼ばれる厳格なデータ構造を定義する必要があります。このテーブルは以下の要素で構成されます。
- テーブル名: データの集合につける名前(例:従業員テーブル)
- 列名(カラム): テーブルのデータ構造(例:従業員番号、氏名)
- 行(レコード): 格納されたデータそのもの(例:1行分の従業員データ)
- 主キー: 各行を(レコード)を重複なく一意に特定するための特別な列(例:従業員番号)
テーブルを作成する際、各列に対して「データ型」(例:数値、文字列)や「制約」(例:空の値は許可しない)を設定します。RDBMSは、この定義に反するデータは格納できないように制限をかけられます。このように厳格なルールを設けることで、RDBMSはデータの整合性を維持しやすくなっています。
主要なRDBMS製品
- Oracle Database
- Microsoft SQL Server
- PostgreSQL
- MySQL
NoSQL (Not Only SQL)
NoSQLは、RDBMS以外のデータベースの総称であり、非常に広範なカテゴリを指します。「Not Only SQL」と呼ばれることもあり、SQLを使わない、あるいはSQLだけではない柔軟なデータ管理を目指したものです。
特徴
RDBMSは、データ構造が複雑になったりデータ容量が巨大化したりすると、パフォーマンス(レスポンス速度)の維持が難しくなる側面があります。NoSQLは、RDBMSでは対処しづらいような「ビッグデータ」や「高速な読み書き」に対応するために生まれました。
RDBMSのような厳格なテーブル構造を持たず、JSONのような柔軟な形式でデータを保持できるのが大きな特徴です。Webページで大量のデータを一度に呼び出す際、RDBMSでは読み込みに時間がかかるケースでも、NoSQLがその問題を解消できることがあります。
例えば、スマートフォンアプリでは、通信が不安定で時折オフラインになる可能性があります。NoSQLデータベースの中には、こうした環境でも動作しやすいように設計されているものもあり、多くのサービスで利用されています。
主要なNoSQL製品
- MongoDB
- Redis
- AWS DynamoDB
RDBMSの操作言語「SQL」とは
RDBMSとNoSQLの違いを見てきましたが、ここからはRDBMSを操作するために不可欠な言語「SQL」について、基本を学んでいきましょう。
SQLが操作するRDB(リレーショナルデータベース)とは
すでにご説明した通り、RDBMSが管理するリレーショナルデータベース(RDB)は、データを行と列からなる「テーブル(表)」形式で管理します。列にはそれぞれ重複しない項目名(見出し)が設定され、そこに行としてデータを追加していきます。表形式にすることで、人間が見てもデータの関係性が分かりやすくなっています。


SQL (Structured Query Language)
SQL(エスキューエル)は、RDBMSに命令を出し、データを操作するための言語です。
特徴
- 命令文自体は比較的単純で、覚えるべき単語も多くありません。
- 修飾語(句)をつけることで、複雑な処理も実行可能です。
SQLはRDBMSの多くで共通して使える言語です。
SQLはデータベース言語としてISO(国際標準化機構)などで規格化されています。実際には製品ごとに細かな記述の違いや独自の機能が存在しますが、基本的な文法は共通です。
そのため、一つのRDBMS(例:MySQL)でSQLを覚えれば、他の多くのRDBMS(例:Oracle, PostgreSQL)でもその知識を活かすことができます。
主要なRDBMS製品の特徴
- Oracle Database: 金融機関など、高い信頼性や堅牢性が求められる大企業で使用されることが多い有償のデータベースです。
- PostgreSQL: オープンソース(無償)のRDBMSです。多機能で標準規格への準拠度が高いと評価されています。
- MySQL: PostgreSQLと同様、オープンソース(無償版あり)のRDBMSです。Webシステムでの採用実績が非常に豊富です。
Web開発の現場では、PostgreSQLかMySQLが使用されるケースが多く見られます。
MySQLとPostgreSQLの主な違い
どちらも広く使われるオープンソースRDBMSですが、細かな違いがあります。
- ライセンス:
- MySQL:オープンソース(無償)と商用(有償)のデュアルライセンス
- PostgreSQL:オープンソースで完全なフリー(無償)ソフトウェア
- アーキテクチャ:
- MySQL:マルチスレッド(処理が高速とされる傾向)
- PostgreSQL:マルチプロセス(複雑な処理に強いとされる傾向)
- 日本語対応 (文字コード):
- MySQL 5:Shift-JIS, UTF-8, cp932, EUC-JP など
- PostgreSQL:UTF-8, EUC-JP など
- 対応OS:
- どちらも Linux, Mac OS X, UNIX, Windows など、主要なOSに幅広く対応しています。
使用する開発環境やフレームワークによって、相性の良いデータベースが決まっている場合も多いです。(例:WordPressはMySQLを標準的に使用します)
一般的な傾向として、PostgreSQLは業務システムのRDBMSとしての利用が多く、MySQLはWebシステムのRDBMSとしての利用が多いと言われています。
SQLの基本コマンド
SQLの命令文は、その役割によって大きく分類されます。ここでは特に重要な2種類を紹介します。
DML (データ操作言語)
DML (Data Manipulation Language) は、テーブル内のデータを操作(取得・登録・更新・削除)するためのSQL文です。
- SELECT文: レコードを取得(検索)
- UPDATE文: レコードを更新
- DELETE文: レコードを削除
- INSERT文: レコードを挿入
具体的な例として「従業員テーブルから、従業員番号 = 2 の氏名を取得する」SELECT文を見てみましょう。

SELECT 氏名 FROM 従業員テーブル WHERE 従業員番号 = 2;
この場合、実行結果は「侍 次郎」となります。
DDL (データ定義言語)
DDL (Data Definition Language) は、データベースやテーブルそのものを作成したり、定義を変更したりするためのSQL文です。
- CREATE文: データベースやテーブルを作成
- DROP文: データベースやテーブルを削除
- ALTER文: データベースやテーブルの定義を変更
例えば「従業員テーブルには、従業員番号、氏名、性別がある」ことを定義する(作成する)ための文法は次のようになります。
CREATE TABLE 従業員 (
従業員番号 INT,
氏名 VARCHAR(20),
性別 CHAR(1)
);
SQLの具体的な構文例
もう少し具体的なSQL文の例を見て、構文に慣れていきましょう。
CREATE文 / INSERT文
まず、テーブルを作成(CREATE)し、そこにデータを挿入(INSERT)します。
/* sampletable という名前のテーブルを作成 */
CREATE TABLE sampletable (
id SERIAL PRIMARY KEY,
num integer,
ownername text,
color text
);
/* 作成した sampletable に4行分のデータを挿入 */
INSERT INTO "public"."sampletable"("id","num","ownername","color")
VALUES (1,123,E'otuski',E'blue'),
(2,455,E'tanaka',E'red'),
(3,6667,E'negishi',E'greeen'),
(4,6,E'yamane',E'pink');
(補足: データ型・オプションについての詳細は こちらの参考サイト などもご覧ください)
実行後、テーブルは以下のようになります。

SELECT文 (データ検索)
次に、SELECT文を使ってテーブルからデータを取り出します。
特定の列(ownername と color)だけを検索する場合:
SELECT ownername, color /* どの列のデータを(SELECT句) */
FROM sampletable; /* どの表から(FROM句) */

特定の条件(idが4)に合う行を検索する場合:
SELECT * /* どの列のデータを(SELECT句) */
FROM sampletable /* どの表から(FROM句) */
WHERE id = 4; /* どのような条件の行を(WHERE句) */
(* は「すべての列」を意味します)

まとめ
SQLの基礎的な構文はこのようになります。Webサイト運営や開発において、データベースのバックアップ(ダンプファイル)を扱う際など、SQL文を目にする機会は意外と多いものです。SQL文に対して苦手意識を持たず、中身が何をしているのかを大まかにでも理解して実行するようにしましょう。
この記事で紹介した基礎をマスターすれば、INNER JOIN(テーブル結合)やUNION(結果セットの統合)といった、より高度なデータ操作もスムーズに理解できるはずです。データベースとSQLは、Web制作のスキルを一段階引き上げてくれる強力な知識ですので、ぜひ第一歩を踏み出してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1: Webサイト運営にデータベースは必須ですか?
A1: 必須ではありません。HTMLとCSSだけで作られたシンプルな静的Webサイトの場合、データベースは不要です。しかし、WordPressのようなCMSを使用したり、ブログ記事、商品情報、ユーザーアカウントなどを管理・更新したりする動的なWebサイトでは、データベースがほぼ必須となります。
Q2: RDBMSとNoSQL、どちらを選べば良いですか?
A2: 用途によります。データの構造が明確に決まっており、データの整合性(正確さ)が非常に重要な場合(例:金融システム、予約システム)はRDBMSが適しています。一方、データ構造が頻繁に変わる、非常に大量のデータを高速に処理したい、柔軟なデータ形式を扱いたい場合(例:SNSの投稿、IoTデバイスのログ)はNoSQLが適していることがあります。
Q3: SQLは学習が難しいですか?
A3: 他のプログラミング言語と比較すると、SQLの基本的な構文(DMLやDDL)は英語に近く直感的であるため、学習の第一歩は踏み出しやすいと言われています。本記事で紹介したSELECT, INSERT, CREATEなどを覚えるだけでも、データベースで何が行われているかの理解が深まります。ただし、複雑なデータを効率的に扱うためには、より高度な構文やデータベースの設計思想(正規化など)を学ぶ必要があり、奥深さもあります。